子どもが幸福な人生を歩むためには、内受容感覚と感情の粒度を高めることが重要です。
さらにポジティブなセルフイメージを与えて、子どもが色々なことに挑戦できるようにしましょう。
なお、 先に以下の記事を読んでいただくとより理解が深まりますので、ぜひご一読ください。
目次
内受容感覚と感情の粒度とは

内受容感覚
内受容感覚とは胸のドキドキや、お腹のムカムカなど、身体の感覚のこと。
嫌いなことでお腹が重く感じたり、好きなことに胸がわくわくしたりなど、内受容感覚は快・不快に大きく関わっています。
内受容感覚がわからないと、自分の好き・嫌いなどの感情がよくわからなくなるため「何をしたいのか」「どうなりたいのか」がわかりにくくなります。
また、自分のストレスにも気づきにくくなり、溜めやすくなってしまうのです。
幼い頃から感情や感覚を否定される経験を繰り返すと、内受容感覚が育ちにくくなります。感情や感覚を否定せず、共感してあげましょう。
感情の粒度
感情の粒度とは「感情をどれだけ細かく・詳しく認識できるか」のこと。
例えば怒ったとき「むかつく」という認識しかできない人と、「激怒」「ムカムカする」「ちょっとイラッとした」など自分の怒りを細かく認識できる人では、後者の方が感情の粒度が高いです。
感情の粒度が高い人ほどセルフコントロール能力高く、ストレスにうまく対応できるため、心理的問題が軽減されます。 参照元*1
感情の粒度を育むためには、子どもの感情や感覚に共感しつつ、言語化してあげましょう。
内受容感覚と感情の粒度を育む

心理的コントロールはNG
内受容感覚と感情の粒度を育むには、「心理的コントロール」を避けなければなりません。
心理的コントロールとは「○○するなんて恥ずかしい!」「誰がお金を払ってると思っているの?」など、羞恥心や罪悪感などのネガティブな感情をあおって行動を変えようとすること。
16歳までに心理的コントロールを多く受けた子どもは、36歳・43歳・60〜64歳での幸福度が低いと報告されています。参照元*2
人と比べて劣等感を持たせたり、できないことを責めて羞恥心を抱かせたりして、子どもをコントロールするのはやめましょう。子どもの心を傷つけるだけでメリットはありません。
感情に共感・言語化し、行動を注意する
子どもは、大人から見ると小さなことで「痛い」「怖い」などとを訴えてくるときがありますよね。
そういうときに「痛くない」「怖くない」「泣かない」などと否定するのはやめましょう。感情・感覚を否定すると、内受容感覚を抑えつけてしまいます。
子どもの感情・感覚には「痛いね」「怖いね」と共感してあげて、内受容感覚を育みましょう。そして「どのくらい痛い?」「どのくらい怖い?」などと、感情の粒度を高める質問をしてあげます。
また、子どもがよそ見をして、何かにぶつかって泣いたとします。
このときも「よそ見してるからぶつかるの!」と強く𠮟るのではなく、「痛かったね」と共感してあげて落ち着いてから「前を向いて歩こうね」と行動を注意してあげましょう。
できるだけ自分で選ばせる
着る服や何をして遊ぶか、どの絵本を読むかなど、できるだけ子どもに選ばせてあげましょう。
親がやらせたい知育おもちゃや教材があったとしても、やるかどうかは子どもに選ばせます。
どうしてもやらせたい場合でも、子どもに「これ楽しいけど一緒にやってみる?」など、自発的にやりたくなるような興味付けをしてから、選ばせましょう。
自分で選ぶことで何が好き・嫌いか、何をしたい・したくないのかが、よくわかるようになります。
ポジティブなセルフイメージを与える

心の健康を育むにはポジティブなセルフイメージを与えることも重要です。
セルフイメージとは「自分は誠実だ」「自分はバカだ」など、自分に対するイメージのこと。人間は自分が持っているセルフイメージに合う行動をしやすいです。
「自分が頑張れる」「自分ならできる」など、ポジティブなセルフイメージを持つことで、自信を持って色々なことにチャレンジしやすくなります。
特に幼少期のセルフイメージは、親の評価に大きく影響されます。親に「お前はバカだ」と言われれば、「自分はバカ」というセルフイメージを持ってしまうかもしれません。
そのセルフイメージを、大人になっても持ち続けることもあります。

なので、子どもに「あなたは頑張れるね」「優しいね」などの声がけをして、ポジティブなセルフイメージを与えてあげましょう。
例えば、のんびりしている子でも「あなたはテキパキ動ける子だね」と言ったほうが「自分はテキパキ動ける」と感じて、すばやく動けるようになります。
一方で「天才」「完璧」など、「努力をしなくてもできる・失敗をしない」かのような声がけはNG。失敗を恐れてチャレンジしづらくなってしまいます。
子どもが自由に遊べる時間を必ず作る

心の健康を守るためには、好きな遊びをしたりぼーっとしたりなど、子どもが自由に使える時間を必ず作りましょう。
努力する能力・やり抜く力(グリット)の重要性は科学的にも知られていますし、一般的にも重要だと考えられます。
ですが、やり抜く力が高いと中年以降、記憶力が悪化したり健康リスクが高まったりする可能性が報告されています。 参照元*3
保育園や幼稚園、学校に行っているだけでも子どもの心は疲れています。さらに習い事や自宅学習などでスケジュールを埋めてしまうと、休める時間がありません。
子どもはなかなか自分のストレスに気付きにくく、親にアピールしくいもの。
いつも緊張していたり、不安そうにしていたり、疲れているように見えたりしたら要注意です。自由にできる時間を作ってあげましょう。
休む大切さを教えることも重要です。
感情が高まったときの対処法

子どもの感情が高まって何を言っても無駄なときや、親がイライラして冷静になれないこと、ありますよね。そんなとき、どうすればいいのでしょうか。
子どもの甘えを拒否しない
子どもが大きくなるにつれて着替えやトイレなど「それくらい自分でやってほしい」と思うことが増えると思います。
ですが、子どもの甘えはできるだけ受け入れましょう。自分の気持ちを押し殺す経験が増えると内受容感覚が育ちにくくなります。
今は甘えていてもいずれできるようになりますし、保育園・幼稚園や学校でできているなら問題ありません。できるだけ自分でやるように促しつつ、自分でやるかどうかは子どもが決めます。
また、癇癪を起こしているときは何を言っても無駄です。子どもがよくない行動をして泣いているときでも、注意するのは後回し。ハグをして落ち着くのを待ちましょう。

ハグすら拒否するときは、少し離れて思い切り泣かせてあげてください。ある程度ストレスを発散できたら、子どもからハグを求めてくる場合が多いです。
けんかは暴力・暴言をしない限り、自由にさせる
子ども同士でけんかをしていても、明らかに一方が悪い場合や暴力・暴言をふるわない限り、基本的に自由にさせます。
特に「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから」と、悪いことをしていないのに上の子に我慢させちゃうこと、ありますよね。
ですが、兄弟は本来平等なもの。「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから」と我慢させると、理不尽に内受容感覚を抑えつけてしまい、自分の感情を殺すようになります。

また、子どもが知らないうちにけんかを始めていて、何が原因なのかわからないことも多いですよね。そのときもあまり口出ししないようにしましょう。
どちらかが「○○が○○した」と相手を悪く言うときもありますが、噓をついている可能性もありますし、子どもはうまく説明できないので悪気なく間違っていることもあります。なので、明らかにどちらかが悪いとき以外は、肩入れしないようにしましょう。
自由にけんかをさせますが、最後にはお互いが謝って、仲直りすることを学ぶのが重要です。
親もネガティブ感情を出していい
親は子どもの前で、イライラや悲しみなどのネガティブな感情を隠しがちです。ですがネガティブな感情を隠すと、子どもとの関係性や子どもの感情に悪影響を与える可能性があります。
実験によって親がネガティブな感情を抑圧(我慢)していると、子どもの反応が鈍くなりポジティブな態度が減ったと報告されました。 参照元*4
子どもは親の感情を上手に読み取ります。親がイライラしているのに行動がいつもと変わらないと、子どもたちは混乱すると考えられます。

なので、親もネガティブな感情を出してOKです。
ですが、怒るときに「あなたのせいで」など、子どもに罪悪感を抱かせる心理的コントロールはやめましょう。
あくまで「○○したかったのにできなかったから、イライラする!」など、アイ(私)メッセージで話すのが重要です。
そして、ネガティブな感情を表現した後に深呼吸をするなど、感情のコントロールを子どもに見せましょう。
誰にでもネガティブな感情はあること。感情のコントルロールを見せれば、子どもも自分のネガティブな感情との付き合い方を学べます。

イライラして、子どもにあたりそうになったら、以下のやり方がおすすめです。
1・イライラをしっかり感じる。
感情は感じることでコントロールしやすくなります。イライラをしっかり感じると、怒りのピークは数秒で過ぎます。
2・息をゆっくり吐ききる。
吸うよりも吐くほうを長くすると、副交感神経が有利になり落ち着きます。また、吐ききってしまえば大きな声は出せません。
まとめ
子どもの心を健全に育むためには、内受容感覚を養うこと、感情の粒度を高めること、ポジティブなセルフイメージを与えることが重要です。
そのためには、心理的コントロールを避けることと、子どもの感情を否定しないことが重要です。感情に共感して、言語化してあげましょう。注意する場合は、感情ではなく行動を注意することが重要です。
また、子どもの頃は親の評価=自己評価になりがちです。「あなたは頑張れるね」など、ポジティブな評価を与えることで、セルフイメージを高めてあげましょう。
子どもの心を健全に育むためにも、内受容感覚・感情の粒度・セルフイメージを高めてあげてください。