【子育てで最重要】マルトリートメントを避けて、脳を健全に成長させよう!

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愛する我が子に幸せな人生を送ってもらうために、一番重要なことはなんでしょうか。私は「マルトリートメント」を防ぐことだと考えています。

マルトリートメントとは「不適切な養育」のこと。子どもの脳はとても柔軟なため、マルトリートメントによって脳の一部が萎縮や肥大したり過活性したりと、物理的に変性してしまうことがわかっています。

脳の変性によって健康の問題が増えたり、非行が増えたり、努力できなくなったりなど、人生に大きな悪影響をもたらしてしまうのです。

この記事ではマルトリートメントによって、脳と人生にどんな悪影響を与えるのか、研究でわかったことをわかりやすく解説します。

子育てをするすべての人に知ってもらいたい内容です。我が子の人生を壊さないためにも、マルトリートメントを避けましょう。

マルトリートメントによって脳が変性する

以下のマルトリートメントによって、脳の変性が報告されています。なお、ここで紹介するのは、精神疾患を患う人を対象にした研究ではありません。

大人になって普通の社会生活を送っている人でも、幼少期にマルトリートメントを受けた人は、脳が変性していました。

マルトリートメントは以下の4つに分類されます。

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 愛着障害
  • 性的虐待

身体的虐待

暴力などの身体的虐待によって、脳の司令塔と呼ばれる前頭前野の一部や、集中力などに関わる帯状回が萎縮したと報告されました。

これらの部位は感情をコントロールしたり、意思決定をしたり集中力を発揮したりなど、人間の生活にとても重要な働きをします。

  • 右前頭前野内側部の容積が平均19.1%減少
  • 右前帯状回が16.9%減少
  • 左前頭前野背外側部が14.5%減少 参照元*1

前頭前野の一部が萎縮すると、自分の感情を上手くコントロールできなくなったり、集中力が低下したりなど、多くのデメリットが生じます。学校生活や仕事など、目標達成のために努力する能力が低下してしまうのです。

帯状回も、意思決定・集中力・共感など、とても重要な働きをします。こちらも萎縮することで、決断力や集中力などの社会生活に重要な能力が低下します。

また、痛みを伝える神経回路が細くなって痛みに鈍くなったり、非行や気分障害などにつながったりする可能性も高くなってしまいます。

お尻を軽く叩くなど、大人にとって軽いと思うような体罰でも影響があると考えられており、体罰は百害あって一利なしです。

心理的虐待 

マルトリートメントの中でも心理的虐待は、特に悪影響が大きいです。心理的虐待は主に暴言と面前DV(目の前で養育者が暴言や暴力を受ける)に分かれます。

暴言

子どもに暴言を吐くことで、コミュニケーションに重要な左脳の聴覚野の一部である上側頭回灰白質が肥大したと報告されました。

過度の不安を感じたり情緒が安定しなくなったり、うつや引きこもりを引き起こす可能性があると指摘されています。

上側頭回灰白質が平均14.1%増加。強い暴言ほど影響が大きい 参照元*2

人の話を聞きとったり会話したりする際に,その分,余計な負荷がかかることが考えられた。「お前なんか生むんじゃなかった」,「お前なんて死んだほうがましだ」 などの暴言を受け続けると,聴覚に障害が生じるだけでなく,知能や理解力の発達にも悪影響が生じることも報告されている。 引用元*1

面前DV

母親などの養育者が暴力や暴言を受けるのを、目の前で見ることを面前DVと言います。視覚野の一部である舌状回が萎縮し、IQや記憶力が下がるなど、知能面への悪影響があると考えられています。

  • 舌状回が6%減少
  • 言葉の暴力の目撃では舌状回が19.8%減少 身体的なDVの目撃では3.2%減少。言葉の暴力の方が身体的暴力よりダメージが大きい
  • 特に11~13歳にDVを目撃すると悪影響が出やすい 参照元*3

面前DVと暴言の組み合わせは、さらに悪影響が強い

なお、トラウマ反応がもっとも重篤なのは、面前DVと暴言による虐待だったと報告されています。

身体的虐待よりも、言葉による虐待と面前DVの組み合わせの方が、悪影響を及ぼす 参照元*4

愛着障害

愛着とは「親や養育者との強い絆」のことを指し、アタッチメントとも言います。

乳幼児は親や養育者との絆を築くことで得られる信頼や安心感をベースに、徐々に社会に適応していきます。子どもの頃に親や養育者との愛着を築くことは、脳の成長のためにとても重要なのです。

しかし、必要な世話をせず子どもを放置しておくネグレクト(育児放棄)や、スキンシップが不足すると愛着を作れません。愛着に障害を持つとやる気に関わる線条体の活動が弱まると報告されました。

線条体の活動が弱まるということは、やる気になりにくいということ。やる気が出なければ勉強や部活動、仕事でも成績を上げるのが難しくなるでしょう。

愛着障害の子どもたちは、報酬系を司る線条体の活動が弱まっている 参照元*5

左半球の一次視覚野野(ブロードマン17野)が20.6%減少。視覚野の減少は、不安や恐怖・心身症状・抑うつなどと関連していた 参照元*6

RAD(反応性アタッチメント障害) の子どもたちは自己肯定感が極端に低く,叱るとフリーズして固まってしまい,褒め言葉はなかなか心に響かない特徴がある 引用元*1

また、自己肯定感の低下や過剰な不安・恐怖心、抑うつとも関連していると考えられています。愛着障害により心が不安定になり、人生に大きな悪影響をもたらしてしまうのです。

子どもの脳が健全に育つためには、十分に甘えられる環境が必要です。

性的虐待

性的虐待は身体を触る・性行為の強要はもちろん、裸の写真を撮ったり卑猥な写真・映像を見せることも当てはまります。

子ども時代に性的虐待を受けた人は視覚野が減少すると報告されました。この脳の影響から、うつや解離(辛い出来事に耐えられず意識や記憶が飛んでしまう)などの症状を発症しやすいと報告されています。

  • 視覚野の容積が18%減少。11歳以前の性的虐待経験が、特に影響が大きい
  • 特に顔の認知に関わる左紡錘状回が18%減少 参照元*7

左の視覚野で影響が際立っていることがわかった。これは何を意味するのか? 右の視覚野は物の全体像をとらえる働きをし,左は細部をとらえる働きをしている。性的虐待被害者の左の視覚野が小さくなっているのは,詳細な画像や映像を見ないですむように無意識下の適応が行なわれたのかもしれない 引用元*1

性的虐待は、心身ともに大きなダメージをもたらします。性的な行為を写真や映像で見せるだけでも、悪影響を及ぼす可能性があるので、注意しましょう。

その他マルトリートメントによる悪影響

他にも、いじめや意図しない転居・転校、家族やペットとの離別、家族が精神疾患を患う、刑務所に送られる、などもトラウマの原因になります。そして、報告されている脳への影響も多種多様です。

大脳辺縁系の障害

多くのタイプの虐待を受けると、海馬や扁桃体(大脳辺縁系)に障害を起こす可能性があります。海馬は記憶力に深く関係するため、記憶力の低下が考えられます。

扁桃体は、不安や恐怖によって活性化する部位。マルトリートメント被害者は扁桃体が過活性している傾向があり、ちょっとしたことで不安や恐怖を感じすぎてしまいます。

扁桃体が活性化されると、理性を司る前頭前野の活動が抑えられるため、理性的な判断・行動ができなくなってしまうのです。

将来、仕事や勉強でがんばっているとき、不安になったり怖いことでも頑張らなければならない場合がありますよね。

そんなときでも人、よりも強く不安や恐怖を感じてしまうため、頑張れなかったり逃げたりしてしまう可能性が高まります。

また、ちょっとしたことで怒ってしまうため、人間関係でも苦労する可能性が高まるのです。

トラウマ化

マルトリートメントのような強いストレスは、トラウマ化してしまう可能性が高いです。幼少期にトラウマを抱えてしまうと、思春期以降に不登校になったり、慢性疲労に見舞われたり、非行や犯罪を行ってしまったりする可能性が高まります。

また、トラウマが悪化するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)になって、苦しみが何度も何度も脳内で再生されてしまうフラッシュバックが起こる可能性もあります。

寿命が短くなる

6種類以上の逆境的小児期体験者は、なかった人と比べて平均寿命が20年短い。参照元*8

逆境的小児期体験とは、マルトリートメントやトラウマの原因となるような体験のことを指します。これらの体験をすればするほど、肺がんやうつ病のリスクが高まるなど、寿命が短くなる可能性が高まるのです。

マルトリートメントの悪影響まとめ

マルトリートメント経験者は、以下のようにさまざまな悪影響があると報告されています。

  • 意欲や集中力の低下
  • IQや記憶力の低下
  • 過剰に不安や恐怖を感じてしまう
  • 逆境に弱くなる
  • 性的行動が早く始まる
  • 非行や犯罪を犯す確率が上がる
  • 共感力が低下したり、小さなことで怒ったりと、他人と信頼関係を築けない
  • 食べ物や薬物への衝動が強くなり、抑えられない
  • ストレスホルモン(コルチゾール)が出やすく、疲れやすい
  • うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神疾患にかかるリスクが高まる
  • 左右の脳をつなぐ脳梁が萎縮し、気持ちの切り替えが上手く出来ない
  • 病気になりやすくなり、寿命が短くなる

マルトリートメントによって、さまざまな面で人生が苦しくなる可能性を高めてしまうのです。

マルトリートメントは連鎖しやすい

ここまでマルトリートメントについて見てきて「自分もマルトリートメントされたことがある」という人も多いのではないでしょうか。自身が悩んできた症状を見つけた方も多いはず。

その場合、マルトリートメントをした養育者に対して、恨みのような気持ちを抱いてしまうかもしれません。しかし、あなたに対してマルトリートメントをした養育者も、マルトリートメントを受けてきた可能性が高いのです。

研究によって、マルトリートメント被害者の1/3が親になったときにマルトリートメントを日常的に行い、1/3がストレスを受けたときにマルトリートメントを行ってしまう可能性があると報告されています。 参照元*9

つまりマルトリートメント被害者の2/3が、我が子にもマルトリートメントを行ってしまう可能性があるのです。

さらに、昔はマルトリートメントが脳に及ぼす影響などわかるはずもなく、育児に暴力も必要だと考える人がたくさんいました。(今でもいます)

なので、過去に起きたマルトリートメントは、誰も責めることができないと私は考えています。

重要なのは、マルトリートメントの悪影響が明らかになってきた今の子育て世代から、徐々に負の連鎖を断ち切ることです。

マルトリートメントを防ぐためにも、育児しようぜ!

子育てをしていると、思い通りにいかないことばかり。ついつい怒りすぎてしまったり、手が出そうになったり・・・。

私もよくあります。

先ほど解説しましたが今の子育て世代は、幼少期に「私もマルトリートメントを受けていた」という方も多いですよね。自分がされてきたことを思い出し、子どもにもやってしまう可能性もあります。

ですが、マルトリートメントはできる限り防がなくてはいけません。そのためにも「パパの積極的な育児参加」が求められます。育児は仕事と変わらず、とても負担が大きいです。

共働きが当たり前の現代ですが、ママが働きながら1人で育児をしたり、1人で2人の子どもを見たりするのはかなり困難。

養育者にストレスや疲労が溜まれば溜まるほど、余裕がなくなってマルトリートメントをしてしまうリスクが高まります。

妻をストレスから守るためにも、子どもをマルトリートメントから守るためにも、パパの育児参加は必須です。

パパが背負う仕事や経済の責任はなかなか変わりませんが、少しでも育児に参加しましょう。そして育児には大きなメリットがあります。

積極的に参加すればするほど、子どもとのふれあいが増えて癒やしのホルモンであるオキシトシンが分泌されて、親も癒やされます。また、些細な成長を日々実感できるため、喜びもたくさん感じられるのです。

これらの幸せは、子どもが幼い頃から育児参加していないと、中々感じられない感情です。

子どもが大きくなってからコミュニケーションをとろうとしても、信頼関係を築けていなければ、心を開いてもらうのはとても難しくなります。

マルトリートメントを防ぐためにも、育児の幸せを感じるためにも、子どもが生まれた直後から積極的にパパも育児参加しましょう。

まとめ マルトリートメントは百害あって一利なし

マルトリートメントとは不適切な養育のこと。主に以下の4つに分類されます。

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 愛着障害
  • 性的虐待

そしてマルトリートメントによって脳が変性し、以下のような悪影響を子どもに与える可能性があります。

  • 意欲や集中力の低下
  • IQや記憶力の低下
  • 過剰に不安や恐怖を感じてしまう
  • 逆境に弱くなる
  • 性的行動が早く始まる
  • 非行や犯罪を犯す確率が上がる
  • 共感力が低下したり、小さなことで怒ったりと、他人と信頼関係を築けない
  • 食べ物や薬物への衝動が強くなり、抑えられない
  • ストレスホルモン(コルチゾール)が出やすく、疲れやすい
  • うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神疾患にかかるリスクが高まる
  • 左右の脳をつなぐ脳梁が萎縮し、気持ちの切り替えが上手く出来ない
  • 病気になりやすくなり、寿命が短くなる

マルトリートメントを防ぐには、パパの積極的な育児参加が求められます。養育者のストレスが溜まるとマルトリートメントをしてしまう可能性が高まるため、パパが育児参加することで、ストレスを分散しましょう。

もちろん育児は大変ですが、育児でしか得られない幸せもたくさんあります。子どもの人生のためにも、家族の幸せのためにも、パパも積極的に育児しましょう!

参考図書・文献

子供の脳を傷つける親たち
親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる
被虐待者の脳科学研究

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